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TTTについて

乳がんへのAC(アンソラサイクリンとサイクロフォスファミドを含む)療法に対する最適な制吐療法を探る臨床試験TTT試験について

順天堂大学医学部乳腺内分泌外科 齊藤 光江

医師主導の二重盲検比較試験を大学ならではのアカデミックな環境で実施したいと考え、多職種(医師・薬剤師・生物統計学者・データマネジャー・事務・看護師ら)の協力を得て、約2年の準備期間の後、ようやく実施にこぎつけました。更には多施設共同を目指して、目下協力機関を募っているところであります。

抗癌剤で治療をされる患者さんにとっては、抵抗力や体力が落ちる中、食欲までが落ちてしまう消化器症状の副作用は、大きな不安と体へのダメージを与えます。嘔気・嘔吐といった、ある種の抗癌剤には当然と思われていた副作用を可能な限り軽減させることは、まずは有効性を主眼に置いた抗癌剤の選択をせざるを得ない医療者にとって、次に果たさねばならない課題でありましょう。患者の心身を守るためでありますが、その中には副作用で苦しめないということのみならず、癌の脅威から守る意味でも抗癌剤の有効性をしっかり発揮させるためには、最適な量と投与間隔で、最適な期間、治療を継続する必要があり、その継続性を担保するということも含まれます。

AC療法で推奨されている3種類の制吐剤併用療法は、それを一切使わないと9割が吐くという状況を、逆に9割の患者に経験させないところまで改善したとされています。しかし、課題は嘔気であります。客観的な尺度開発が難しい症状にて、正確な把握がされにくいのです。特に遅発期(抗癌剤投与から24時間以上経過してから)の嘔気は、その制御が未解決の課題であるとされています。3剤併用療法の中でセロトニン受容体拮抗剤においては第一世代と第二世代が推奨レベルが同じでありますが、1剤や2剤投与療法の中では、第二世代の優越性が証明されています。我々は、これらの状況を鑑み、AC療法における3剤併用制吐療法の中での最適療法を探り、また嘔気やその結果として起こり得る二次的な副作用の実情を既存の尺度と症状日誌、食事量、体重、生化学データなどから分析する臨床試験TTT(Trial for Triplet Antiemetic Therapy)を立ち上げたので、ここに紹介させていただきます。